以前につくばの都市伝説・怪異についてまとめましたが、今回は新たに、筑波大学でかつて噂されていた怪異についてまとめていきたいと思います。
筑波大学新聞(1986年6月号)に「マラソン幽霊」の情報があると知り、実際に筑波大学新聞でその記事を探してみようと思い立ったのがきっかけです。すると、なんと「マラソン幽霊」以外の多くの怪異の情報を当時の記事から発掘することができました!!
さて、「マラソン幽霊」の記録があったのがこちらの新聞記事です。なんとこの記事、民俗学者で『妖怪の民俗学』『都市空間の怪異』を著した宮田登先生に取材して書かれたというもの。宮田登先生は、かつて筑波大学の歴史人類学系の教授として教鞭をとっていらしたのです。
今回のブログ記事は、主にこの新聞内容を書き起こしたものです。なお、ほとんど内容は新聞記事と変わりありませんが、見出し等はわかりやすくひな吉が再編集しなおしてもいます。
宿舎に現れる幽霊
部屋をかけ抜けるジョギング幽霊 ー平砂九号棟ー
記事では「ジョギング幽霊」とされているが、この「ジョギング幽霊」こそ、「マラソン幽霊」という名で以前本ブログで取り上げた怪異である。
その内容は、平砂九号棟の三階で、ジョギングする幽霊を見たというもの。寝ていると、突然空中をアディダスの黄色いトレーナーを着た幽霊が壁から現れ、反対側の壁へ走り抜けていくのだという。
暗闇の中にうずくまる幽霊
ある夜、寝ていた学生が恐ろしい夢を見て目が覚めた。ふと部屋の中を見ると、すみの方に見たこともない男が暗闇の中でうずくまっている。驚いていると、この男は消えてしまった。後から聞くところによると、そこは以前、自殺した人が住んでいた部屋であったという。1983年頃の話である。
入口に浮かぶ女性の顔 ー平砂六号棟ー
平砂六号棟入口の泥落としには、顔が浮かぶと言われている。芸術専門学群のある女性は六号棟に入ろうとすると、足元に女性の顔は見えるという。以来、ずっとその場所には顔が浮かび、彼女はいるも踏まないようにさけて歩いた。
夜な夜な音がする部屋 ー追越二十七号棟ー
追越二十七号棟一階の端の部屋は、不思議な音のする部屋として恐れられていた。
この部屋の住人であった男子学生は、一の矢宿舎に住む女子学生と交際していた。ところが、ある日、この女性は首をつって自殺してしまった。以来、彼の部屋では毎夜不思議な音がするようになったということである。その後、この部屋はしばらくの間開かずの間となってしまったが、隣の部屋では誰もいないはずの隣から、毎夜物音が聞こえていたという1979年頃の話である。
宿舎に現れるよろいかぶとの姿の幽霊
どこの宿舎かははっきりしないが、ある部屋で突然、壁からよろいかぶとを着た幽霊が現れ、歩いてカベを突き抜けていった。気味が悪くなった住人が外へ出ると、並びの部屋の人が次々と部屋から出てきた。彼らはみな、同様の姿を見たという。
つくばのあたりは平将門の乱の戦場だったと言われるが、これはその時に死んで成仏できずにいる武士の霊だと言われている。1979~1978年頃の話である。
風化じいさんの霊 ー一の矢宿舎ー
これもかつて、「風化老人」として取り上げた怪異である。どうやら、宿舎に出る怪異であったようだ。
一の矢宿舎の二人部屋に一人で住んでいたA君が、夜ふと目覚めると、誰かが机に座って本をバラバラめくっている。目をこらしてみると、ぼろぼろの服を纏い、肌も風化したような老人がぼろぼろの古文書をめくっていた。ドアを開けたときに、この老人が椅子に座っているのを目撃した人もいるという。
学内にはびこる幽霊
松美池に現れるお百姓さんの霊
松美池周辺は昔、池と平塚線の間の松林の中であった。ある人が白昼にお百姓さんを見かけた。おかしいなと思ってみてみると、このお百姓さんには足がなく、やがてスーッと消えたという。
体芸棟付近に浮かぶ霊
数年前、ある女性は、体芸棟と体芸食堂の間に、白い三体の霊が浮かんでいるのを見たという。また、体芸棟内にも数体の霊がたまって浮かんでいるのを見たという話しもある。
大学周辺に出る幽霊
猿壁十字路に立つ女の幽霊
一の矢周りのループ道路の西側にある交差点は、通称猿壁十字路と言われるが、ここには白い服をまとった女性の霊が惨殺された死体を捨てた場所だったと言われる。そのためか、すぐ近くのループ道路と平塚線の交差点では事故が多いのだという
軍服を着た幽霊 ー天久保三丁目ー
天久保三丁目の松美池にほど近いあるアパートでは、軍服を着た幽霊が出たという話がある。ある人が部屋のドアを開けると、目の前に立っていたという。加波山事件で死んだ人の霊ではないかと言われている。
学外編
毎夜、だんごを買いにくる女の幽霊 筑波町 (by 当時筑波町大形在住 遠山都一さん)
筑波町の小田という部屋に、室町時代の末期頃、一軒のだんご屋があった。この店は大変繁盛し、旅人たちは、ここに立ち寄ってだんごを食べるのを楽しみにしていた。
ある年の秋頃から、この店に毎晩夜遅くになって、だんごを買いにくる美しい女性が現れるようになった。不思議に思っだんご屋の主人は、ある夜この女性の後をつけて行ってみた。すると、この女性は近くの山の中に入ると、すうっと消えてしまった。この山は、しばらく前から赤ん坊の声が聞こえると不思議がられていた山であった。
だんご屋の主人が山に入っていってみると、頭の白い赤ん坊が泣いていた。この赤ん坊は、毎日だんごを買いに来た女性の子供だったのである。その女性は、栃木県地方の名主の娘であったが、ある日、夫が家出してしまったのを嘆き悲しみ、夫を探して筑波地方までやって来たのだった。ところが、小田まで来たところで山賊に殺され、山中に捨てられてしまった。身ごもっていたこの女性は、その時に子供を産んだ。そして、この子供を育てるために、幽霊になって、だんごを買いにきたのだという。
この赤ん坊は、後に小田の解脱寺という寺に預けられ、修行を積んで頭白上人と呼ばれる名僧となった。上人は晩年、新治村に五重の塔を建て、母の供養を盛大に行ったといわれる。
この五重の塔は、今も残っており、訪れる人が後をたたないという。
石投げ燈籠 (by 当時桜村金田在住 佐藤賢さん)
桜村の金田小学校の前には古い燈籠が残っている。これは昔、今の(当時の)金田小学校の処にあったといわれる姫屋敷という高貴な女性の家の中庭にあったという燈籠だと言われる。
この燈籠が石投げ燈籠と呼ばれるのは、罪を犯した人や、悪心を持った人がここを通ると石が飛んできて、悪人を追い払ってくれると言われたことに由来している。これは、姫屋敷の姫にまつわる怨霊がこの燈籠に乗り移って、近づこうとする悪人を追い払ったのだと言われている。
まとめ
以上、筑波大学新聞に掲載されていた怪異をまとめてみました。「口裂け女」や「人面犬」のような、キャラクター化された怪異というのは少なく、どちらかというと“幽霊”の話が多くをしめているように思われます。
思うに、現代における怪異は、“幽霊”として語られていた怪談が大衆の間で噂され、キャラクター化し、いわゆる「学校の階段」や「都市伝説」となるのではないでしょうか。筑波大学の怪異をこうしてみてみますと、まさに「ジョギング幽霊」なんかが、“幽霊“として語られながらも、「ジョギング幽霊」、あるいは「マラソン幽霊」という名の都市伝説として今では理解されるようになっているような気がいたします。いずれ、都市伝説について深く調べてみたいと思うので、またその時に記事にでもして考えをまとめたいと思います。